
導入
街頭演説などで、「外国人に生活保護を
支給するのはおかしい」「日本人の税金が
奪われている」という声を目にすることが
増えています。
しかし、これらの主張の多くは、
誤った情報や思い込みに基づくものです。
現実の制度や統計、歴史的背景を正しく
理解すれば、現場で暮らす外国人や制度の
運用についての誤解が解けます。
この記事では、外国人への生活保護は本当に
違法なのか、なぜバッシングが起こるのか、
最新データや統計に基づいた受給状況、
支援現場の実態、誤解やデマの具体例、
政治的な利用や社会的影響をわかりやすく
整理して解説します。

外国人に生活保護は違法なのか
結論から言えば、違法ではありません。
『国民』には外国人は含まれない」と
明記されました。しかし同時に、
「行政措置として事実上の保護が
行われ得る」という側面は
否定されていません。
さらに1954年の厚生省通知「生活に困窮する
外国人に対する生活保護の措置について」に
より、永住者や定住者、認定難民などの
外国人にも、日本人と同様の保護を行う
運用が続けられています。
つまり、法的権利としての受給ではなく、
行政運用による保護が
認められている形です。
この複雑な仕組みが、SNS上で「違法」と
誤解される原因になっています。

外国人生活保護がバッシング
される理由
外国人への生活保護が批判される背景には、
いくつかの心理的・社会的要因があります。
・税金への不満と不安
景気や雇用状況が不安定な中で、自分や
家族の生活が厳しいと感じる人々が、
「外国人が税金を使って
優遇されているのでは」と
不安になることがあります。
・不正受給のイメージ拡散
SNSでは、「日本に来てすぐ生活保護を
受給している外国人がいる」といった誤解が
広まっています。
しかし実際には、生活保護対象となる
外国人は全体のわずか2.9%程度で、
受給条件を満たす永住者や
定住者に限られます。
・政治利用
参政党や一部右派政治団体は、選挙戦で
「外国人に生活保護を与えるな」と掲げ、
支持者を動員する傾向があります。
これにより、誤解が社会的に
拡散してしまうのです。
・感情的な反発
「自分たちの国なのに外国人が
出しゃばっている」と感じる心理が、
排外的な発言を生みやすくしています。

歴史的背景:戦後の経緯と
1954年の通知
戦後、朝鮮半島や台湾からの移民は
日本国籍を剥奪され、生活基盤を日本に
置くしかありませんでした。
激しい差別と就労制限の中、多くの人々が
貧困状態で生活していました。
この状況を踏まえ、1954年に
厚生省社会局長通知が出され、
「生活に困窮する外国人にも
生活保護を準用する」と明記されました。
この通知は現在まで続き、外国人も
人道的配慮の下で生活保護を
受けられる制度となっています。
1990年代以降の運用変更
バブル期以降、日本政府は労働力確保のため
外国人受け入れを拡大しました。
生活保護の申請が急増することを懸念し、
1990年代に以下の在留資格に限定する
運用が定着しました。
- 永住者(特別永住者含む)
- 定住者
- 日本人の配偶者
- 永住者の配偶者
- 認定難民
口頭指示による運用変更であったため、
法的には曖昧な部分が残っています。
最新データで見る受給状況
2023年度の厚労省調査によると、
被保護世帯は約1,650,478世帯。
そのうち世帯主が外国籍の世帯は
約47,317世帯で、全体のわずか2.9%です。
受給者の国籍は韓国・朝鮮、フィリピンが
多く、植民地主義の歴史や離婚母子家庭の
事情など、構造的な背景があります。
外国人受給が日本財政を
逼迫させているという主張は、
統計上事実ではありません。
現場のリアル:支援団体の声
「つくろい東京ファンド」では、
生活保護を受けられない外国人の支援に
日々奔走しています。
・仮放免者は就労不可・医療保険未加入
・永住・定住者でも入管の資格更新や
在留期間短縮を恐れ、申請をためらう
・SNS上で語られる「ぜいたくな生活」は
現場には存在しない
現場の声からも、外国人生活保護の実態は
誤解されていることがわかります。

SNSで広がる代表的な
誤情報の検証
・デマ1:外国人の受給は違法 → 運用上合法
・デマ2:日本人より優遇されている →
受給基準は同じ
・デマ3:外国人受給者が半数以上 →
実際は3%未満
誤解やデマが拡散されると、
外国人を攻撃する空気が社会に広がります。

人道と現実:国際条約の観点
日本は1979年に国際人権規約を批准、
1981年には難民条約に加入しました。
・社会保障に国籍条項を設けることは
国際的には非推奨
・年金・健康保険は国籍条項を撤廃済み
・生活保護も人道的配慮として外国人に
支給されている
国際的な視点からも、外国人への生活支援は
常識的な制度です。
ケーススタディ:制度からこぼれ落ちる人々
仮放免者の苦境
就労不可・医療未加入で、支援団体や教会に
依存した生活を送っています。
長期にわたり不安定な生活を
強いられるケースも少なくありません。
難民申請者の現実
難民認定率は1%前後で、
生活保護利用も不可。
支援団体によれば「見えない貧困層」として
日本に存在しており、生活困窮は
深刻化しています。
政治利用と社会的影響
選挙戦で「外国人に生活保護を与えるな」
というスローガンは支持層の動員に
利用されます。
しかし、現場では生活困窮する外国人が
増え、医療未受診や路上生活といった
問題が発生しています。
政治的煽動による社会的排除のリスクは
非常に高いです。
読者への提言
・事実に基づく議論を:違法でも優遇
でもなく、人道的運用であることを理解
・共生社会の視点:「日本人か外国人か」
ではなく、困窮者支援を優先
スローガンではなく、統計・判例・現場の
声をもとに理解を広める