
タンス預金とは、銀行に預けず家庭や
法人が保有している現金を指します。
最近、日本銀行が公表した資料によると、
タンス預金の規模は約60兆円に達する
可能性があると報じられています。
この記事では、日銀の推計方法や家庭
経済への影響、注意点をわかりやすく
解説します。
タンス預金とは何か
タンス預金は家庭の引き出しや金庫に眠る
現金のことで、銀行に預けず手元で
管理されることが多いです。
現金を手元に置く理由はさまざまで、
災害や金融不安への備え、心理的な
安心感、税務上の理由、相続準備などが
あります。
日本ではキャッシュレス化が
進んでいますが、依然として現金への
信頼感は強く、特に高齢世代や現金利用の
習慣が強い地域ではタンス預金が多く
存在します。
また、法人や事業者が現金を保有する
ケースもあるため、家庭以外でも現金が
滞留しています。
日銀の資料から読み解く
タンス預金の規模
日本銀行は新紙幣の発行に合わせ、
紙幣流通の状況をまとめたレビューを
発表しました。
その中で、紙幣の発行残高や名目GDPとの
関係を分析し、「取引に使われない
現金=非取引需要」を推計しています。
これがタンス預金に近い概念です。
2024年度時点での紙幣発行残高は
約118兆円です。
そのうち約半分が非取引需要と
考えられるため、約60兆円がタンス預金
規模に相当すると推測されます。
この規模は非常に大きく、日本国内で
流通している現金の半分近くが取引に
使われていないことを意味します。
算出方法1 千円札と
一万円札の比較
日銀はまず、券種別の発行枚数を比較する
方法で推計しています。
千円札は日常の買い物やサービスの
支払いに使われやすく、取引需要を
反映します。
一方で一万円札は大きな額面であるため、
貯蔵や価値保管目的で
保有されやすいという特徴があります。
データによると、1990年代後半以降、
一万円札の発行枚数の増加率は千円札を
大きく上回っています。
この差分を「取引に使われない現金」と
見なし、非取引需要の存在を
測定しています。
紙幣の用途の違いを反映したシンプルかつ
有効な推計手法です。
算出方法2 名目GDPとの比較
もう一つの方法は、名目GDPに対する
紙幣発行残高の比率を分析するものです。
1955年から1994年までの長期平均を
基準に考えると、通常はGDPに比例して
現金需要も増えると考えられます。
しかし1990年代半ば以降、この比率は
明らかに上昇しました。
これは経済規模に見合わない現金が
発行され、使われずに滞留していることを
示しています。
日銀はこの超過分を非取引需要と
定義しました。
千円札と一万円札の比較による手法と
組み合わせることで、より精度の高い
推計が可能になります。
二つの手法は異なるアプローチですが、
どちらも非取引需要が発行残高の
半分程度に達している
可能性を示しています。
タンス預金と非取引需要は
同じではない
重要な点として、非取引需要=
タンス預金とは限りません。
非取引需要には家庭や企業が保有する
現金だけでなく、海外持ち出しや火災
災害で失われた紙幣も含まれます。
したがって日銀の推計で示された
約60兆円がすべて家庭に眠る
現金というわけではありません。
それでも、相当な規模の現金が
タンス預金として存在していることは
確かです。
非取引需要は日常経済に使われていない
現金の総量を示す概念であり、
個人の手元にある現金だけを
指すものではないことを理解しておく
必要があります。
タンス預金が増える背景
タンス預金が増える背景には複数の
要因があります。
まず低金利の長期化です。銀行に預けても
利息がほとんど付かないため、
現金を手元に置く傾向が強まります。
次に災害リスクや金融システムへの
不安です。
大規模地震や停電時に
キャッシュレス決済が使えない可能性が
あるため、現金を手元に
保持する人が増えます。
さらに、新紙幣発行時の心理的要因も
あります。
旧紙幣を使わず保管する人が一定数おり、
流通速度が落ちることが影響しています。
高齢化社会の進展も一因です。
高齢者は現金での支払いに慣れており、
銀行預金よりも手元で管理する傾向が
強いとされています。
経済への影響
タンス預金の増加は、経済にさまざまな
影響を与えます。
まず銀行を通じて資金が
循環しにくくなるため、企業への
貸し出しや投資に回らない資金が増え、
経済全体の活性化を妨げる
可能性があります。
また、金融政策の効果も弱まります。
日銀が金利政策や資金供給を行っても、
現金が家庭に滞留すると市場に出回らず、
政策の意図が十分に反映されません。
さらに、防犯や税務リスクも存在します。
大量の現金を家庭で保有することは
盗難や紛失の危険を伴い、資金の透明性が
低くなるため、税務上のトラブルの
原因になる可能性もあります。
経済循環を健全にするには、
適度な現金保有と銀行預金
投資のバランスが重要です。
新紙幣発行とタンス預金の行方
2024年に新紙幣が発行されましたが、
流通のスピードは前回の切り替え時よりも
遅いとされています。
旧札が家庭に保管されたまま出回らず、
金融機関に戻るまで
時間がかかっていることが一因です。
新札の普及が遅れれば、経済活動や取引に
支障が出る可能性もあります。
今後は金利上昇やキャッシュレス化の
進展によって、タンス預金が
減少していくのか、それとも根強く
残るのか注目されます。
政策や金融環境の変化が家庭や企業の
現金保有行動に与える影響は
非常に大きいです。
個人が考えるべきこと
タンス預金は心理的な安心感を
与えますが、リスクもあります。
火災や盗難に備えて耐火金庫や防犯対策が
必要です。
また、相続時に現金が見つからず
トラブルになるケースもあります。
さらに、資産を有効に活用できず、
インフレが進めば現金の実質価値は
目減りします。
安全性と利便性を両立するには、
現金だけに依存せず、預金や投資を
組み合わせて資産管理することが大切です。
タンス預金の増減は、自分自身の
資産管理にも深く関わっています。
まとめ
タンス預金は60兆円規模かという推計は、
日本銀行の分析に基づくものです。
千円札と一万円札の発行動向や
GDP比率から導かれた非取引需要は、
発行残高の半分程度に
達していると考えられます。
これは日本全体の現金流通の中で非常に
大きな割合を占め、経済や金融政策への
影響も無視できません。
ただし、推計はあくまで目安であり、
すべてが家庭のタンスにある
現金ではない点に注意が必要です。
現金の扱い方は重要なテーマであり、
防犯や資産運用の観点からも
考慮する必要があります。新紙幣流通や
金利動向を注視しつつ、自分自身の
資産管理に活かすことが求められます。