RIZAPグループは2026年3月期第1四半期に
おいて、売上収益399億1500万円とわずかな
減収ながら、営業利益4億800万円を計上し
4年ぶりに営業黒字を達成しました。
親会社の所有者に帰属する四半期純利益は
59億4500万円の赤字となりましたが、
これは関連会社への債権放棄に伴う
約59億円の一過性費用が主因です。
事業の収益力は改善傾向にあり、同社は
「守り」から「攻め」へと再び舵を切る
局面に入ったといえます。
本記事では、黒字転換の背景となった
セルフ型コンビニジム
「ちょこざっぷ(chocoZAP)」の収益化、
フランチャイズ戦略の始動、
事業ポートフォリオの再編、そして
通期見通しまでを、スマートフォンでも
読みやすい構成で詳しく解説します。
リード 『結果にコミット』から
『赤字解消にコミット』へ
「結果にコミット」という強いメッセージで
知られるRIZAPは、近年は事業整理や
減損対応など再建フェーズにありました。
今回の第1四半期で営業黒字に
転じたことは、同社が
「赤字解消にコミット」した成果が
見え始めたサインです。
特に、低価格・24時間・セルフ利用が
特徴の「ちょこざっぷ」が成長ドライバー
として収益化に貢献し、運営効率と
スケールメリットが本格的に
作用し始めています。
同社は今後、直営中心のモデルから
フランチャイズを併用する成長モデルへと
移行し、リスクと資本負担を抑えつつ
店舗網を広げる方針です。
これにより、地方都市まで裾野を広げ、
会員の利便性向上と収益力の両立を
目指します。
第1四半期決算の要点と読み解き
第1四半期(2025年4月〜6月)の
売上収益は399億1500万円で
前年同期比1.3%減となりました。
広告投資や販促のコントロール、
在庫やコストの最適化を進めた結果、
トップラインは微減ながらも営業段階で
黒字化しています。
営業利益は4億800万円で、前年同期の28億
8400万円の赤字から大幅に改善しました。
最終損益は59億4500万円の赤字ですが、
これは関連会社への債権放棄に伴う
約59億円の費用計上によるものです。
性質上の一過性の要因が大きく、
事業の恒常的な収益力を
弱めるものではありません。
この構図は、コスト構造の見直しと効率化が
着実に進み、土台としての収益体質が
強化されていることを示唆します。
特に「ちょこざっぷ」の収益改善が
グループ全体の損益に波及し始めています。
ちょこざっぷの拡大と収益化
店舗1823・会員123万人の現在地
ちょこざっぷは2022年のサービス開始以来、
急速に店舗網を拡大し、2024年度に
1000店舗を突破しました。
2025年8月14日時点では前期末から
32店舗増の1823店舗へ到達しています。
会員数は123万人とやや減少傾向が
見られる一方で、店舗の稼働効率や
オペレーション品質の改善により
収益性は向上しました。
同サービスは月額制のサブスクリプション
モデルで、フィットネスマシンだけでなく、
セルフエステ、セルフ脱毛、
ゴルフ練習などの「多機能化」を
進めています。
これにより、来店頻度の向上と退会率の
抑制、客単価の底上げが期待できます。
加えて、営業時間の24時間化と無人運営の
仕組みは人件費と運営コストの抑制に
寄与し、固定費のレバレッジが
効く段階へ移行しつつあります。
短期的には会員数の変動があるものの、
ネットワーク効果と店舗密度の最適化で、
一店舗当たりの採算性を磨き上げる
フェーズに入っています。
フランチャイズ戦略への転換
規模拡大と資本効率の両立へ
直営中心で拡大してきたちょこざっぷは、
今後フランチャイズ(FC)展開に
着手します。
資本負担の軽減と出店スピードの
両立が狙いで、蓄積した運営ノウハウを
パッケージ化し、標準化・品質管理の
仕組みでスケールします。
フランチャイズでは、加盟店の投資負担を
一部移転しつつ、本部はロイヤルティや
システム利用料、ブランド・運営サポートで
収益化します。
直営とFCのハイブリッドは、
キャッシュフローとバランスシートの安定に
寄与し、マクロ環境変化への耐性も
高まります。
全国各地のニッチエリアや地方都市の
ホワイトスペースを素早く埋めることも
可能です。
運営の肝は、オペレーションの均質化と
顧客体験の維持です。本部主導で清掃
点検・マシン保守の巡回設計や、アプリでの
サポート動線、KPIモニタリングを
高度化し、FCでも直営水準の体験を
提供することが求められます。
事業ポートフォリオの集中と再編
非中核からの撤退と選択と集中
RIZAPグループは近年、非中核事業の整理を
進めてきました。
2025年8月14日には、繊維・商社事業の
堀田丸正株式を米国の
Bakkt Opco Holdingsへ一部譲渡することを
発表し、約6億2300万円の売却益を
計上します。
発行済株式の約53.97%を
保有していたうち、約30%を
売却するものです。
この取引は、資本効率の改善と経営資源の
集中を目的とし、グループとしての
コア領域を「美容・健康・フィットネス」へ
明確化する動きの一環です。
パーソナルジムの「RIZAP」とセルフ型の
「ちょこざっぷ」を二本柱に据え、
収益性と成長性の高い事業に人的・資金的
リソースを配分します。
KPIで読み解く事業の質
会員・ARPU・解約率をどう見るか
サブスクリプション事業の健全性を
測るうえで、会員数、ARPU
(ユーザー平均月間売上)、解約率、
稼働率などのKPIが重要です。
ちょこざっぷでは、多機能化とアプリ体験の
強化により、継続率の改善を図っています。
セルフエステ・脱毛やゴルフなどの
付加価値は、利用動機の多様化につながり、
季節要因による解約の平準化も
期待できます。
一方で、過度な多機能化は運営の複雑性や
保守コストの上昇リスクもはらみます。
機能追加は段階的に効果検証を行い、
利用率や満足度、メンテナンスコストとの
バランスを取りながら最適化することが
重要です。
オペレーション改善の具体策
品質・コスト・スピードの同時実現
現場オペレーションでは、マシン故障の
早期検知と計画保守、清掃品質の標準化、
混雑時間帯の可視化と分散誘導が鍵です。
アプリ通知や店内サイネージでの混雑予報、
巡回頻度の動的最適化により、
体験とコストを同時に改善できます。
また、広告効率は「新規獲得単価(CAC)
/LTV比」で評価し、自然流入や友人紹介
インセンティブの強化、法人提携を通じた
チャネル分散で持続的な獲得力を
確保します。
価格改定やオプション課金の設計も、
解約弾力性を見極めながら慎重に行うことが
肝要です。
通期見通しとシナリオ
2026年3月期は増益計画
同社の2026年3月期通期連結業績予想は、
売上収益1720億円(前年比0.5%増)、
営業利益110億円(同484.3%増)、
親会社の所有者に帰属する当期利益20億円
(同657.5%増)を見込んでいます。
第1四半期で営業黒字に転じたことは、
計画達成に向けた重要な一歩です。
上振れ要因としては、フランチャイズの
立ち上がりが順調に進むこと、店舗稼働率の
底上げ、付加価値サービスの浸透が
挙げられます。
下振れ要因としては、会員数の想定以上の
減速、保守コストの上振れ、競争激化による
価格圧力が考えられます。
四半期ごとのKPI開示と運営の微修正が、
ガイダンスの信頼度を高める鍵になります。
投資家視点でのチェックポイント
投資家としては、直営・FCの店舗
ミックス比率、既存店の売上
利用率の推移、解約率と再入会率、
CAC/LTVのトレンド、設備投資額と
減価償却費の関係、運転資本の
効率性などを注視したいところです。
とりわけFC化の進展は、PLとBSへの影響が
大きいため、ロイヤルティ率や
本部サポートコストの開示に注目が
集まります。
また、非中核からの撤退による資本効率の
改善が実際のROIC上昇につながるか、
取締役会の監督機能や内部統制の強化が
継続するかも重要な観点です。
競合環境と差別化 低価格帯のレッドオーシャンをどう戦うか
低価格・セルフ型ジムは競合が
増えています。
差別化の軸は、利便性(立地・営業時間)、
体験価値(清潔さ・機器品質・アプリUX)、
付加価値(美容・ヘルスケア連携)、
コミュニティ(継続動機付け)の四点です。
ちょこざっぷは多機能化とアプリ体験で
差別化を図りつつ、ネットワーク密度で
利便性を高めています。
今後は、企業・自治体との連携による
健康施策の共同推進や、医療データ
連携のような「社会実装型」の差別化も
有効です。
保険会社とのインセンティブ設計など、
エコシステム化が進むと参入障壁が
高まります。
リスクと対応策 会員変動・品質管理
コスト上振れ
主なリスクは、季節要因や景気後退に伴う
会員の純減、FC展開に伴う品質ばらつき、
保守・光熱費の上振れ、
炎上リスクなどです。
対応策として、料金プランの柔軟化、
オプションのバンドル設計、
品質監査の強化、エネルギー効率の改善、
クレーム一次受付の自動化などが
考えられます。
ESG観点では、深夜帯安全対策と
プライバシー配慮、女性や高齢者も安心して
利用できる店舗設計、地域社会との共生が
求められます。
まとめ 第二の成長ストーリーへ
RIZAPグループは、2026年3月期第1四半期で
4年ぶりの営業黒字を達成しました。
ちょこざっぷの運営効率化と多機能化、
フランチャイズ戦略の始動、非中核事業の
整理により、再建から成長への転換点を
迎えています。
通期では大幅な増益計画を掲げ、
2000店舗体制を視野に入れた
規模拡大を進めます。
「結果にコミット」から
「赤字解消にコミット」へ。
同社は次のフェーズとして、持続的に利益を
生み、社会に健康価値を提供し続ける
企業像を描いています。
今後の決算と現場オペレーションの
磨き込みに、引き続き注目していきます。